第四十一夜 明智光秀
最近シミが増えてきた。己の顔を鏡に映し、明智光秀は悩んでいた。
もとより肌の手入れなど、考えたこともなかったし、直射日光を浴びるのが、肌に良いと思っていた。
気になりだすと、シミにばかり視線が定まる。世人はどのように思うのだろう。
面と向かって話をしても、相手はシミが気になって、私の言うことなど聞いてやしないのではないか。
武将として、それでは困る。威厳にかかわる問題であろう。
シミってやつは、どうにも消せないものらしい。
「薄くはならんか」
真偽のほどはさておいて、光秀は日夜、ハトムギを煎じ、トマトやキウイをむさぼり食った。巷にあふれる情報に振り回されつつ、やるべきことは全てやったが、効果のほどは現れない。
ストレスだろうか。鏡に映る己の顔を、じっと見つめる。
「むしろシミは、濃くなっているのではないか」
さらにはその数も、増えているのではなかろうか。
果たして敵は、本能寺にはいなかった。
鏡に映る、シミだらけの己こそ、討ち果たすべき相手に見えてくるから不思議だ。
第三十六夜
食材が無いので、自生している山菜を採りに、山へ入った。
といっても季節柄、ワラビもゼンマイも生えてはいない。
怪しい色彩のキノコが群生しているが、こいつは危険だ。
コカの葉を摘んで天ぷらにするのも、止した方がいいだろう。
いつしか小さな池に出ていた。
そこで仙人が、静かに釣り糸を垂らしている。
龍を狙って百年が過ぎたというが、「あっという間だ」
土産にマジックマッシュルームの西京漬けを持たせてくれた。