台所夜話

食べ物にまつわる夢の話

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

第四十七夜 南高梅

たまには妻と、ウォーキングに出かけるか。黄昏時を狙ってね。 誰が誰だか分からないから良いのだと、妻は言うけど。 狭い町だし、面が割れると少々気まずいって事もあるのかも知れんが。 それにしても、日が長くなったな。夜七時半を回っても、個体の識別が…

第四十六夜 ペペロンチーノ

異変を察知した訳ではないが、いつもより早めに、妻が寝室から這い出して来たぞ。 リッチーブラックモアばりの、ロッククラシックな長髪を、前後左右に激しく振り乱しながら。 「何事かあらむ」 努めて平静に私がただすと、 「かが、かが」と、えらく痰が絡…

第四十五夜 ミロ

朝っぱらから金魚売りが近所を回っているなんて、世も末だね。 無駄に甘い食パンには、オリーブオイルを回しがけて、少しはリカバリーするか。 近頃牛乳にミロを混ぜるが、こいつもなかなかに甘ったるいし。 加えてバナナも甘いじゃないか。 朝っぱらから大…

第四十四夜 山椒

スーパームーンに皆既月食が重なって、あたりはいくぶん、暗くはなったが。 この夜にまさか、釜など抜かれはしないだろうね。 闇に紛れて糠床に、山椒の実をパラパラと。 呪文を唱えつつ妻が、新たに糠に混ぜ込むモノとは。 その山椒の実以外、この位置から…