台所夜話

食べ物にまつわる夢の話

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

第十夜

「鳴門のらっきょうはいらんかね」 玄関口で声がした。 栗原はるみに似たおばちゃんが、リヤカーを引いて売りに来ていた。 「間違いないよ。鳴門のらっきょうは」 いいモノだからとすすめられ、三年分ほど買ってしまった。 シンクにたっぷり水を張り、そこに…

第九夜

気が付けば、高血圧になっていた。 まだ薬には頼るまいと、塩ラーメンのスープを残し、カゴメのトマトジュースを飲んだ。 にわかには、信じがたい味がした。 子供の時分に打ちのめされた、あの強烈なクセがほとんど無くなっている。 飲み口は至ってマイルド…

第八夜

気付けば指にイボがいくつも出来ていた。 「タコの呪いだ」 通りすがりの漁師が、当然のようにそう言った。 何の因果か、その漁師から、イボ鯛を4、5匹貰った。 煮ても焼いても、唐揚げにしても、まことにうまい魚である。 日に日にイボは増殖した。 とれ…