台所夜話

食べ物にまつわる夢の話

第八夜

気付けば指にイボがいくつも出来ていた。

「タコの呪いだ」

通りすがりの漁師が、当然のようにそう言った。

 

何の因果か、その漁師から、イボ鯛を4、5匹貰った。

煮ても焼いても、唐揚げにしても、まことにうまい魚である。

 

日に日にイボは増殖した。

とれたての地ダコに塩を揉みこんで、洗濯機に入れて5分回した。

 

「吸盤のようなイボだ」

その手でタコを茹で、ブツ切りにして、祈って酒の肴に加えた。

「謹んで食らうがよい」

通りすがりの漁師が言った。