台所夜話

食べ物にまつわる夢の話

第五十五夜 ヤイト

 運良くヤイトを手に入れたので、刺身にしました。

 いわゆる「スマ」という魚。

 身が脂で白っぽい。それだけに、脂の乗りが上々です。

 鮮度も抜群、絶品でした。

 美味しくいただいたあとには、妻と二人で仰向けに。

 みたされたおなかを丸出しにして、静かにお灸をすえてやります。

 ゆらゆらと立ちのぼる幽かな煙に、天窓からは月の光が差し込んで。

 何となく、海にたゆたう魚になったような心地がします。