台所夜話

食べ物にまつわる夢の話

第十夜

「鳴門のらっきょうはいらんかね」

玄関口で声がした。

栗原はるみに似たおばちゃんが、リヤカーを引いて売りに来ていた。

 

「間違いないよ。鳴門のらっきょうは」

いいモノだからとすすめられ、三年分ほど買ってしまった。

 

シンクにたっぷり水を張り、そこに大量のらっきょうを投入。

ひとつひとつ外皮をむいて、きれいな粒に仕上げていった。

 

何たる苦行であることか。なかなか終わりが見えない作業。

何しろ数が多すぎる。三年分のミソギである。

 

全てのらっきょうを綺麗にむいて、ようやくシンクの水を抜く。

排水口の周りには、名物、鳴門の渦が見えるぞ。