「鳴門のらっきょうはいらんかね」
玄関口で声がした。
栗原はるみに似たおばちゃんが、リヤカーを引いて売りに来ていた。
「間違いないよ。鳴門のらっきょうは」
いいモノだからとすすめられ、三年分ほど買ってしまった。
シンクにたっぷり水を張り、そこに大量のらっきょうを投入。
ひとつひとつ外皮をむいて、きれいな粒に仕上げていった。
何たる苦行であることか。なかなか終わりが見えない作業。
何しろ数が多すぎる。三年分のミソギである。
全てのらっきょうを綺麗にむいて、ようやくシンクの水を抜く。
排水口の周りには、名物、鳴門の渦が見えるぞ。