梅泥棒って、珍しくはない。スイカ泥棒に米泥棒、年中行事のひとつである。
私はその列に名を連ねたくはないので、ここは妻の甘言に乗らず、自重。
実家の畑に遠征して、頃合いのキュウリを四、五本もいでくるが宜しかろう。
妻は勢い、足元の梅の実を蹴り飛ばし、野良犬に吠えられて逆上。肩をいからせ、帰ってしまった。
路上には、潰れた梅が点々と、そして私が、取り残された。
この暗がりの中、足を運ぶのにあたっては、重々気をつけねばなるまいよ。
星一つ出ていない闇夜であるが、行きずりの梅の実が放つ香りにやられてしまう。
まもなく雨が降り出しそうな匂いもそこに混じってくる。