第四十二夜 酒呑童子
つまみは、なとりの、いかくんとさきいか。
酒は、丹後の生酛吟醸。
朝まだき、大江山に降りかかる、流星群を眺めつつ、酒呑童子は、独り盃を傾ける。
ちょっと悪さをしすぎたのかも知れない。
いよいよ源頼光が、私をやっつけにくるという。
それも仕方のないことと思う一方、何やら話が大きくなりすぎているんじゃないかと、疑いたくもなる今日この頃。
普段の私は、たんなる酒飲みのおっさんに過ぎない。
時々、鬼の扮装をして、人里に下り暴れまわるが。
この山に住む者は皆、鬼のコスプレをしてやりたい放題。
私はたんに、くじ引きで、その頭領となっただけの事である。
もうすぐ夜明け。
山伏の格好をした頼光が、私を倒しにやってくる。
こんな時、何を食べて迎えれば良いのか。
心残りのないように、最期に何を食べようか。
「マックフライポテトじゃないよな」
酒吞童子は、ため息をつく。