2020-01-06 第二十一夜 口さみしいのに、歌う歌がありません。 ひと晩じゅう、安いホルモンをひたすら噛んで過ごしています。 十年前に開けてひと口飲んだだけ。 今更ながらその酒を、奈落の底まで探しに行こうか。 ふとストーブの火が消える音。 「灯油はあるか」 具のないおでんのだし汁だけが香る部屋。 何もない春に向かって、何もしない冬の日々が続きます。