2019-02-02 第五夜 雨が降っている。夜も近い刻限。 あばら家の軒先で、傘も持たずにバナナをかじる迷子がひとり。 途切れ途切れに異国の歌を雨音に乗せて歌っている。 道行く人など、どこにもいない。猫も蛙も出てこない。 街灯ひとつない裏通りが雨に黒々と染まっている。 バナナの何と黄色いことか。 レッドツェッペリンのレインソング。 バナナを食べ終えた迷子は突然、雨の中にその身を投じる。 また新たな軒先へ、タイムスリップしたのだろうか。 よく滑りそうなバナナの皮が、静かに雨に打たれている。