台所夜話

食べ物にまつわる夢の話

第四夜

夕日が射す公園。誰もいない。

今週の競馬も終わった。

やれやれ。どうにもこうにも、話にならない。

私の頭は早々に力が尽きて、見せ場なく、後ろのほうの馬群に沈んだ。

 

隣に猫が座っていた。

「アジのたたきでも食うか」

そのどら猫は、憎たらしい顔をしたままこちらを見上げ、ひと声鳴いた。

私は膝の上にある、競馬新聞の包みを破き、小さなタッパーを取り出した。

 

何が入っているのか知れない。

隣のどら猫が、じっとタッパーを注視する。

当たりか。外れか。

アジのたたきか。クサフグか。

隣のどら猫が、固唾を呑む。

「はたして、どちらか」

たとえ出た目がクサフグであったとしても、来週もまた、競馬は開催されるのである。