台所夜話

食べ物にまつわる夢の話

第五十夜 奈良漬け

ここはひとつ、ショパンの「雨だれ」はどうですか。

ともすれば、日本の梅雨にも合うからと、勝手に上がり込んできて、手持ちのピアニカを奏でる隣人。

ペヤングの匂いに惹かれてやむなく乱入したって言うけど、その気持ち、分からなくもないな。

「お礼に、これを」とその隣人が差し出したのは、「いただきものの、奈良漬けですが」

こりゃまた珍しいものですな。ともすれば、うな丼にこそ合うからと、うなぎも一緒にくれりゃいいのに。

などと、都合の良いことを思っていたら、古来の梅雨はどこへやら、突如として百年に一度か二度の大雨が降りだしてきたぞ。

ショパンどころではないな。いや逆に、ここはショパンで合うのかも知れないな。