2020-04-29 第三十二夜 もそろ 緊急事態宣言の夜、淡路の真鯛の目が光った。 バッハはソーセージを手土産に、神戸の港に上陸した。 六甲おろしは吹かなかった。 桜鯛の姿造りに灘の生一本。 泥酔したトラッキーに降りかかる長尺のマタイ受難曲。 暗いカウンターの片隅で、つば九郎は羽を休める。 東京音頭は流れない。 店主ジャビットは、ここぞとばかり、秘蔵のドブロクを引っ張り出した。 ツマミは「かにかも」と「うな次郎」の辛子マヨネーズ和え。 それをラッキーに差し出す。