台所夜話

食べ物にまつわる夢の話

第一夜

乱切りしている。食パンを2枚。

しかも、中華包丁で。

 

そのうえ川の中州である。中華の達人が、そこで腕をふるっている。

今度はハムの塊を、中華包丁で削いでいる。

 

空は一面霞んでいる。

下流から、光化学スモッグが、じわりじわりと押し寄せてくる。

 

真っ赤に熱せられた鍋が、突如、雀卓の上に叩き出された。

上がる間際の国士無双が、ジュッといって煙になった。

 

「出来たよ」と、川の中州を揺るがすように、カタコトの日本語が響き渡った。

「亡命したてよ。熱々よ」

ドロドロの鍋の中を指差して、中華の達人が笑っている。